第4節 否認権(第86条―第98条)/会社更生法


(平成十四年十二月十三日法律第154号)

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最終改正:平成一五年八月一日法律第138号

(最終改正までの未施行法令)
平成十五年八月一日法律第134号(未施行)
 

  会社更生法(昭和二十七年法律第172号)の全部を改正する。


    第4節 否認権

(否認の原因)
第86条  次に掲げる行為であって、更生手続開始前にされたものは、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
 更生会社が更生債権者等を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、更生債権者等を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
 更生会社が支払の停止又は破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この条から第88条までにおいて「支払の停止等」という。)があった後にした更生債権者等を害する行為及び担保の供与又は債務の消滅に関する行為。ただし、これにより利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと又は更生債権者等を害する事実を知っていたときに限る。
 更生会社が支払の停止等があった後又はその前三十日以内にした担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、更生会社の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が更生会社の義務に属しないもの。ただし、債権者において、その行為の当時、更生会社が他の更生債権者等との平等を害することを知ってした事実を知らなかったとき(その行為が支払の停止等があった後にされたものである場合にあっては、支払の停止等があったことをも知らなかったときに限る。)は、この限りでない。
 更生会社が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為
 前項の規定は、更生会社が租税等の請求権又は第142条第2号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為については、適用しない。

(手形債務支払の場合の例外)
第87条  前条第1項の規定は、更生会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。
 前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出しを委託した者が振出しの当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、管財人は、これらの者に更生会社が支払った金額を償還させることができる。

(権利変動の対抗要件の否認)
第88条  支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後悪意でしたものであるときは、これを否認することができる。ただし、当該仮登記又は当該仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいてされた本登記又は本登録については、この限りでない。
 前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録について準用する。

(執行行為の否認)
第89条  否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げない。

(支払の停止を知っていたことに基づく否認の制限)
第90条  更生手続開始の申立ての日から一年以上前にした行為は、支払の停止の事実を知っていたことを理由として否認することができない。

(否認権行使の効果等)
第91条  否認権の行使は、更生会社財産を原状に復させる。
 第86条第1項第4号に掲げる行為が否認された場合において、相手方は、当該行為の当時善意であったときは、その現に受けている利益を償還すれば足りる。
 更生会社の行為が否認されたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
 更生会社の受けた反対給付が更生会社財産中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
 更生会社の受けた反対給付によって生じた利益の全部が更生会社財産中に現存する場合 共益債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
 更生会社の受けた反対給付によって生じた利益が更生会社財産中に現存しない場合 更生債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
 更生会社の受けた反対給付によって生じた利益の一部が更生会社財産中に現存する場合 共益債権者としてその現存利益の返還を請求する権利及び更生債権者として反対給付と現存利益との差額の償還を請求する権利

(相手方の債権の回復)
第92条  更生会社の行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによって原状に復する。

(転得者に対する否認権)
第93条  次に掲げる場合には、否認権は、転得者に対しても、行使することができる。
 転得者が転得の当時、それぞれその前者に対する否認の原因のあることを知っていたとき。
 転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した場合において、それぞれその前者に対して否認の原因があるとき。
 第91条第2項の規定は、前項第2号の規定により否認権の行使があった場合について準用する。

(否認権の行使)
第94条  否認権は、訴え、否認の請求又は抗弁によって、管財人が行う。
 前項の訴え及び否認の請求事件は、更生裁判所が管轄する。

(否認の請求及びこれについての決定)
第95条  否認の請求をするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
 否認の請求を認容し、又はこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならない。
 裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方又は転得者を審尋しなければならない。
 否認の請求を認容する決定があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。

(否認の請求を認容する決定に対する異議の訴え)
第96条  否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
 前項の訴えは、更生裁判所が管轄する。
 第1項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、否認の請求を認容する決定を認可し、変更し、又は取り消す。
 否認の請求を認容する決定の全部又は一部を認可する判決が確定したときは、当該決定(当該判決において認可された部分に限る。)は、確定判決と同一の効力を有する。第1項の訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、取り下げられたとき、又は却下されたときにおける否認の請求を認容する決定についても、同様とする。

(否認権行使の期間)
第97条  否認権は、更生手続開始の日から二年を経過したときは、行使することができない。否認しようとする行為の日から二十年を経過したときも、同様とする。

(詐害行為取消訴訟等)
第98条  民法(明治二十九年法律第89号)第424条の規定により更生債権者の提起した訴訟、破産法若しくは民事再生法(平成十一年法律第225号)の規定による否認の訴訟又は同法の規定による否認の請求を認容する決定に対する異議の訴訟が更生手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断する。
 管財人は、前項の規定によって中断した訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
 前項の場合においては、相手方の更生債権者、破産管財人又は再生手続における管財人若しくは否認権限を有する監督委員(民事再生法第128条第2項に規定する否認権限を有する監督委員をいう。第5項において同じ。)に対する訴訟費用請求権は、共益債権とする。
 第1項の規定によって中断した訴訟手続について第2項の規定による受継があった後に更生手続が終了したときは、当該訴訟手続は中断する。
 前項の場合には、更生債権者、破産管財人又は再生手続における管財人若しくは否認権限を有する監督委員において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
 第1項の規定によって中断した訴訟手続について第2項の規定による受継があるまでに更生手続が終了したときは、前項前段に規定する者は、当該訴訟手続を当然に受継する。

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